日本年金機構が発表した令和3年度計画では、
厚生年金の加入逃れに対する対策として「あるもの」を活用する方針が明らかにされました。

あるものとは。

法人登記簿です。

今までは厚生年金に未加入の企業を洗い出すため、
国税徴収のデータを利用、さらには雇用保険の被保険者のデータをも活用してきましたが、
その厚生年金の加入逃れの実態調査をますます強化する方針。
昨年度で厚生年金未加入であることがわかっている企業に対しては対応が徹底され、
令和3年度中の厚生年金加入を目指していることが明らかになりました。

厚生年金の加入はお済みでしょうか?
以下では、厚生年金に加入すべき対象事業所と、厚生年金(社会保険)未加入のままにしているとどうなってしまうのかについて解説したいと思います。

厚生年金に加入しなければならない事業所とは

厚生年金は、健康保険とセットで「社会保険」と呼ばれていますが、
ここではわかりやすくするため、そのまま「厚生年金」という呼称を用います。

  • 法人
  • 個人事業所で5人以上の労働者がいる場合

以上の条件に当たる場合は、厚生年金に加入しなければなりません。
法人にあっては、事業の種類を問わず、1人でも労働者がいれば強制的に加入しなければなりません(強制適用)。
※強制適用とは、事業主や労働者の意思に関係なく、事業主は加入の手続きを行わなければならないということです。
社長1人で法人を設立した場合でも社長には加入の義務が発生しますが(報酬の関係で例外もあり)、
強制適用事業所となった個人事業主については加入することはできません。

以上が強制適用になる事業所ですが、
この厚生年金の加入について、「任意」となっている事業所も存在します。

厚生年金の任意適用事業所とは

厚生年金(社会保険)の加入が任意とされている任意適用事業所とは、以下のとおりです。

  • 第1次産業(農林・水産・畜産業)
  • サービス業(旅館、料理飲食店、接客業、理容業等)
  • 法務業(社会保険労務士、弁護士、税理士等の事業所)
     ※令和4年からは法改正により上記法務業の事業所であっても条件該当で強制適用事業所となる可能性あり
  • 宗教業(神社、寺院、教会等)

ただ、これらの事業であっても、
労働者の半数以上の同意を得て、年金事務所長の認可を受けることができれば適用事業所となることができます。

では、厚生年金に加入しなければならないとなったとき、
どのような手続きを行わなければならないのでしょうか?

厚生年金に加入するときは新規適用届を

新たに厚生年金(健康保険も)に加入するときは、
「健康保険 厚生年金保険 新規適用届」という書類を提出します。

提出先は、所轄の年金事務所です。
提出期限は、強制適用になってから原則5日以内とされていますが、
遡及加入も書類によって証明できれば可能なこともあります。
決められた添付書類の提出も必要になります。

会社で働く労働者の生活基盤を守る役目もある厚生年金。
加入する義務があるのに未加入のまま放置しているとどうなるのでしょうか。

厚生年金未加入は罰則の危険

厚生年金(社会保険)未加入だとどうなるのか。

  • 年金事務所からの加入要請
  • 年金事務所で加入手続きを行うよう、警告する文書を受ける
  • 立ち入り検査

警告された文書をそのままにしていると立ち入り検査が行われ、
罰則として最大2年間まで遡って保険料納付を求められることも。
過去2年間の保険料の金額は、会社にとって非常に重い負担となることも少なくありません。

厚生年金加入逃れに対する日本年金機構の取り組み

新型コロナウイルスが猛威を振るい、
昨年度は新型コロナウイルスの影響を受けた事業所に対し特例納付猶予措置も取ってきた年金機構ですが、
保険料の徴収対策においてはその影響を踏まえて適切に対処していく方針のようです。
また、新型コロナウイルス対策としてオンライン化を推進し、電子申請による届け出も推進しています。

厚生年金の加入義務がある会社にとって、その保険料の負担は決して小さいものではありません。
しかし、厚生年金は社員の福利厚生ともなります。
将来の社員の年金額に反映され、さらに万が一の不測の事態における傷病手当金や障害年金の受給にもつながるのです。
企業においては、今後厚生年金(社会保険)の適用があたりまえとなる時代において、
厚生年金の加入逃れや、その適用条件を満たさないように対応することは、
企業の労務管理の面でも疑問ですし、イメージアップにも悪影響を与える恐れも。
社会を構成する一員として義務のある会社におかれましては、加入の手続きをおすすめ致します。

厚生年金未加入に対するご相談はこちらからどうぞ

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