働き方改革の柱の一つに、「残業時間の適正管理」というものがありますが、
この「残業時間の管理」に頭を悩ませる社長が多いようです。

日本は欧米と比較すると労働時間が長い

「残業大国」と言われることが多い日本ですが、
フルタイムで働く労働者の労働時間は何十年も前から一向に減る兆しがありませんでした。
その理由として考えられることは3つあります。

①日本人独特の企業風土
今まで多くの日本人は年功序列や終身雇用により、
会社に定年まで保障されていることが当たりまえだと思われてきました。
そのため、会社に対する忠誠心や献身的に働こうという思いも強く、
がむしゃらに働くことで会社に貢献してきたという高度経済成長期のなごりが深く刻まれてきたためです。

②法律による規制の曖昧さ
実は従来から、残業時間には上限規制や指導というものは一応存在しました。
「一応」というのは、仮に残業時間に違反があったとしても罰則はなく、
特別条項付き三六協定を締結すればいくらでも残業させることが現実的には可能であったからです。
(残業時間は青天井で、これが長時間労働を許してしまうことになりました。)

③外国と比較した生産性の未成熟
世界経済の中心をトップレベルで走り続けてきたとも言える日本ですが、
諸外国から見ると、「日本の企業の職場は無駄が多い」と見えるそうです。
世界経済フォーラムが発表している国際競争力ランキングでは日本は北欧勢とほぼ同レベルなのに対し、
日本生産性本部が発表している労働生産性ランキングでは先進国の最下位レベル。
これは、欧米人が日本人と比較して効率よく働いて仕事を終えていると捉えることができ、
日本は生産性ではなく長時間労働で外国との競争力を維持しているといえます。

改正労働基準法により残業時間の管理はどう変わるか

いきすぎた長時間労働により引き起こされた悲惨な過労死事件、
いわゆる「電通事件」は世間に大きな衝撃を与え、
社会は長時間労働の見直し・是正に向けての動きが高まっていきました。
このような情勢の中で働き方改革関連法(改正労働基準法)はうまれたのです。
(厚労省HPよりhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322_00001.html

改正後は罰則が制定され、違反者には「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が科せられます。
また、新たな規制では、法律による上限(原則)では、1か月: 45時間、1年:360時間まで延長可能ですが、
違反した場合には罰則。
そして、臨時的な特別な事情がある場合の上限として、
・年間720時間以内
・2~6ヵ月平均で80時間以内
・単月では100時間未満
・適用は年6回(1か月1回まで) と定められています。

これらにより、会社は労働時間を正確に把握する義務も負うことになります。

さらに、時間外労働の割増率について。
時間外労働の割増率は25%以上ですが、
1か月の時間外労働が60時間を超えた場合の割増率は50%以上となりました。
これは中小企業は今まで猶予されてきましたが、2023年4月1日より中小企業にも同様に適用となります。

残業管理のポイント

これらの法の要請からも残業管理はますます重要なものとなりました。
では、残業管理のポイントはどこにあるのでしょうか。

  1. 使用者自らによる現認
    使用者が実際の労働状況や業務が終了したことを目で見て確認する必要があるとされています。
  2. タイムカードやICカードなどのデータを使って確認
    労働時間の把握のため、タイムカードやパソコンの使用時間など、客観的な記録を残すことが求められています。

しかし、実際の事業場では、
「業務が終了しているのに社員がタイムカードを押さない」
という悩みが多く聞かれます。
本来、残業は会社の指示で行われるもので、従業員が自由に残業することはできないのですが、
近年の社会経済状況の悪化も影響し、少しでも残業代を得ようとする従業員の気持ちも見え隠れするようです。

このようなケースでおすすめしたいのは、
客観的な労働時間の記録に併用し、使用者の確認+物理的に残業をできない状況を作り出す仕組みに変えていくこと。
つまり、タイムカードの打刻時間のみが正ではない、ということです。

残業時間の適正管理のご相談は、みなとまち社会保険労務士事務所までお気軽にどうぞ。
会社の現場に合わせた労働時間の管理を事業主様と一緒に考えていきます。
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